氷雨の日の銀座で 

 冷たい雨が降りしきる11日、銀座に個展を観に行きました。
ご案内の葉書の裏面を彩る鬼百合の色彩と線の力強さに惹かれての
こと。岡本 錦さんの水彩画の個展です。
 銀座一丁目、ガス灯通りに面したガラス張りの画廊は
絵の個展にはぴったりの場所でした。
道から中の様子が見て取れる設計になっていて、思わず立ち止まり、
立ち寄る方も多かったそうです。
 この日も真冬のような寒さと雨空にもかかわらず、
先客が何人かありました。
 入って正面の壁に、例の鬼百合の絵と並んで、
カサブランカ、石蕗の絵が掲げてありました。
他のかべにはホトトギス、紫陽花、ホウズキ、アイリスなどの花々、
迷いのない力強い鉛筆のラインの上に花、葉、茎の繊細な
彩色がなされ、その花たちは生き生きと瑞々しい命を
与えられていました。
 花の他に出身地の宇部周辺などの風景画、
赤子と母親など数枚の人物画、果物など合わせて二十数点ほどの
水彩画とデッサンがありました。
いずれもやわらかく穏やかな雰囲気を持つ絵の中に、
それぞれの対象に向けられる鋭く、でも温かい眼差しが感じられ、
心に和みの生まれる個展でした。
 因みに岡本さんは夫の母方の斜交従兄弟で、
会社勤めの傍ら絵筆を取る生活を数十年続けた後、
今は心おきなく絵に向かえる日々を持てるようになったと
素敵な笑顔で話してくださいました。
 次の機会を心待ちする思いです。