花散る頃

 海棠が雨にうな垂れています。
初夏を思わせる昨日から一転して
冷たい雨の朝を迎えました。
でも芽吹きはじめた木々も花咲き始めた草々も
雨にいきいきと応えています。
春はもう留まるところを知らずです。

 
 昨日の知川庵での「お茶を楽しむ会」は
いつにもまして和やかな心に残るお集まりとなりました。
94歳の母は、まことに元気なのですけれど、
それを保つために、
「もう少しゆったりと過ごしたい」と言います。
定期的な稽古日が時に負担になることもあるというのが
最近の母の心情のようです。
でも「ここでみなさんとご一緒するのが何よりのたのしみ」
とも母は言います。
みなさんと話し合って、きめました。
これからは日取りや時間の枠を外して
母の体調と気持に合わせて、声を掛けさせて頂くということに。


 時は炉から風炉への渡しの時、
床の掛け軸は「関」としました。
そして「初心に帰って」という母の提案で、
棚は無し、稽古を始めた頃の茶室の設えとしました。

釡は羽釡、気温が上がる季節に、羽で火を隠して
熱を遠ざける心遣いです。

床の花には、
母が咲き始めたばかりの金花茶と新芽の伸びた花筏
勢いよく活けこんでくれました。

主菓子は薔薇、
 
副菓子には箱根土産の桜饅頭と桜餅、

そしてイースターセットです。

 

 炭点前から始まって、
夫々に濃茶点前(水指:逆瓢、茶入:瓶子型 茶碗:楽)

薄茶点前(茶器:桜絵付、茶碗:桜型)とおさらいをして

和気あいあいの茶会は3時間を越えました。
 母がいつものように満面の笑みで、
「お会いできて本当にうれしかったわ。
ありがとうございました。またいらしてくださいね。」と
しみじみとご挨拶をして、
会は和やかに幕を閉じました。
「次は6月の昼食会でお会いしましょうね」と
見送りに出た母への、
みなさんの笑顔の温かさに、心がちょっぴり濡れました。