文月に入って

 今朝も静かに雨が降っています。
庭灯に浮かび上がる緑の初々しいこと
人の動きが始まる前の、贅沢な時間です。
今日はJuly 4th、
アメリカ中が星条旗に溢れていることでしょう。


 短い6月はあっという間に過ぎて、滑り込むように7月になりました。
私の、長男の、父の、母の誕生月です。
そして、お盆、夏休み、イヴェントフルな季節の始まりの月です。
でも梅雨はまだ終わりません。
その兆しも見えないのか、天気予報の話題にものぼりません。
それならば、この季節に浸って、楽しむことに致しましょう。


 雨が小止みになると庭に出ます。
今年は瑠璃菊が早々と去って、藪萱草は一輪だけ、
緑は盛大ですけれど、花の数が少ないように思います。
年々歳々花相似たり・・、そうなのですけれど、そうでもなくて
それだけに庭を見るのが楽しいのです。


 梔子(クチナシ)の花が今年はよく咲きます。

雨が止んで薄日が漏れると、花が放つ甘い薫りが辺りに漂います。
きっと蜜もおいしいのでしょう。小さな虫も集ってきます。
霧雨が止んだ後に見るクチナシは、涙をためた乙女のようです。
陽射しも雨も似合う、この花の花言葉は、
「私は幸せ」「喜びを運ぶ」「優雅」と良いことばかり。
タキシードの胸に挿したり、ダンスの誘いに捧げられたりと
海外でももてはやされる花のようです。


 雨をちょっと避けるように作った玄関花壇、
植え込んだヴィンカが雨の中で、華やぎを増しています。



*父旅立ちの日に(6月30日の日記から)

 あの日と同じように、空が重い朝です。
忘れることの出来ない一日が始まりました。
長い長い一日でした。


 朝一番に買い物に出たのは、
父の好きだったものを整える食材の仕込みのため。
今日は一日父と過ごします。


 父は前夜から少し様子が違っていました。
弟と交代でベットの傍で過ごし、明け方帰宅しました。
朝食を用意して、夫を送り出すために。
そしてまた病院へ。
それからは片時も父の傍から離れずに過ごしました。
父との最後の時間だと分かっていましたから。
それは、父が私に残してくれた、ご褒美だったと思っています。
父と共有した、ほんとうに貴重な時間でした。


 夫が戻ってくるのを待っていたように、
父は静かに旅立って逝きました。
「おとうさま、ありがとう」と耳元で囁く私に、
父が微かに頷いたと、二人をじっと見ていた夫が言いました。
「おとうさまには絶対に聞こえたよ」とも。
夫の胸に顔を埋めて泣きました。


 胸に溢れる思いと、目に脳裏に浮かぶ情景に浸りながら、
父のこの日の夕食を整えました。

生まれ故郷信州の産物、枝豆や野沢菜漬けが大好きでしたけれど、
ラザニア、グラタン、ババロアなどにも目を細める父でした。