秋晴れに澄んだ歌声響いて

 昨「文化の日」は、予報を覆して、抜けるような碧空、
日頃から行いの良い方たちのお集まりには天候も
味方してくれるのでしょう。
ワグネルソサイエティOB男声合唱定期演奏会
友人たちと伺いました。
意外に道のりに時間がかかり、会場に着いたのは開演の15分前、

席は既にほぼ埋まっていて
三席続きは最前列しか空いていませんでした。
目の前には厚い緞帳、


幕が開くと舞台上の歌い手の方々の半数位をグランドピアノが
隠していますが、目の当たりに見える低音部の方々は、
それぞれのお顔の表情やお声が手に取るようです。
それだけに臨場感があって今までとは異なる楽しみ方が出来ました。


 内容の濃い本当に素晴らしい演奏会でした。
馴染み深い「学生王子」、小川嘉世さんのソロもさることながら、
バックの皆さんのハーモニーが軽やかで、若々しく、躍動感があって
楽しい気分になりました。
福永先生の編曲にも心躍る思いがしましたし。


 賛助出演の女声合唱「遥かな歩み」しみじみと美しい歌声でした。


 インターミッションの後の演出が小粋でしたね。
いなせな紺と赤の法被姿がずらりと背を見せて並んでいる姿が
緞帳の下から現れるや「オーッ」と会場がどよめきました。
黄色い法被のいなせなお兄さん風の指揮者大久保さんの
弾むような指揮ぶりが見応え(?)がありました。
美しい言の葉、流れ、リズム、弾み、日本の音はやっぱり
心の芯に届いて、魂を揺さぶります。
「親船小舟」、「あの子この子」、「野焼きの頃」
そしてアンコール曲の「夕焼け小焼け」
心に滲み入る切なさと温もりと懐かしさがありました。


「トスティ歌曲集」からは何とも言えぬ迫力を感じました。
皆さん暗譜、自信に満ちて悠々と歌っていらっしゃるとお見受けしました。
私にとっても何回目かの「トスティ」、円熟味を増したこの曲を
今回始めて原語を追いながら聴き耳を立てました。
Ⅲ. Tristezza、
Ⅳ.L'ultima canzone
の切ない胸の内を切々と歌い上げるソロがことのほか美しく、
コーラスは深々とこの上なくゆたかで潤いに充ち、
その響きは胸に迫るものがありました。
V.Addio!が歌い上げられると、拍手しばし鳴りやまず。
余韻の残る会場に、アンコール曲「Amazing Grace」が静かに流れて、
演奏者と聴衆との一体感がその場には生まれているようでした。


 ロビーに出れば、人の波、演奏なさった方々を囲んで
いくつもの輪が出来ていました。
慶應の方たちの絆を目の当たりする度、羨ましさが募ります。
今回も友人F.さんのお元気なご様子に接してこの上なくうれしく、
コンサートの満足感とそのぬくもりを抱いて帰路に着きました。