空低く垂れこめて

 植物が潤う恵みの雨とは知りつつも、
空が低い日は、心も少しくぐもって、
陽射しが恋しくなります。
でも明日も雨の予報、
気温はもう下がらず、寒さの心配は無くなりましたけれど。


 曇りがちだった昨日、
友人と誘い合わせて、出光美術館
唐物茶陶と青銅器「悠久の美」展を観に行きました。


 お茶の世界で唐物と言いますと、
和ものよりも一段上のものという
感覚があります。
「天目」「唐物」の道具を扱うときは、
低い位置で丁寧に丁寧にと指導されますし、
それらを道具として使う点前は、
難易度が高い、上級のものとされています。
唐物が輸入高級品であった当時は、
そうした器で茶を味わう人は、
身分の高い人に限られていましたから
茶を点て、供する側は、
道具の扱い方にも点前にも気を使ったのでしょう。

中国福建省の「建窯」では
12世紀ころから天目茶碗が焼かれていた由、
それは、日本の需要に向けての制作だったと聞きます。


 昨日の展示品は、
紀元前のものから17世紀までのもの。
私は青銅器の力強い模様や形、その巨大さ、多様さに
圧倒されますけれど、そこまで止まりです。
もっと丁寧に見て、学べばとは思いますけれど、
今のところはやきもので手一杯。
今回も唐物茶陶器だけをじっくり見てきました。

天目茶碗
禾目天目茶碗が魅力的でした。

黒に逭の釉薬が溶け入り幽玄な雰囲気を
醸し出すこの茶碗は、
油滴天目のような派手さはありませんけれど、
秘めた情念の様なものが感じられて
妙に惹き込まれました。
禾は稲の意とのこと。
すり鉢型の茶碗の姿を先の尖った稲穂に
喩えての表現でしょうか。

唐物茶入
中国では、日本のような茶道はありませんから、
これらの器は茶入として作られたものではありません。
中には水滴の形をしたものもありましたし、
おそらく調味料や薬などの類を入れた器だったのでしょう。
それらの生活雑器をそれぞれのセンスで茶入として見立てたものが
大名物とか中興名物として後の世に残ったようです。
今回圧倒的な存在感を感じたのは
唐物肩衝茶入 銘は師匠坊
(家康→家光→家綱→綱吉、最後は加賀前田家所蔵)

肩をいからせ、どっしりとした姿、深い飴色
堂々とした風格がありました。


 11時から2時間半も美術館に居てお腹が空きました。
今日は友人の提案で「なか田」でお寿司を。
あじ、たい、とりがい、がお勧めとのこと
なるほど身が締まって美味でした。
それに私は必ず
赤貝ひも、こはだ、中トロ、やまごぼう巻きが欠かせません。


 しゃべり足りない私達は、場所を移して
コーヒーとアップルパイを。
腹も身の内と言いますのに、またも食欲の
意のままになってしまいました。
同じことばかり繰り返しています。