晴れやかな小春日和に

 連休前からしきりに報じられていた天気予報、
「連休中のお天気は、あまり期待できません」が
ものの見事に、良い方に外れました。
朝からよく晴れた空から、やさしい陽射しがさして、
コートも要らない暖かさ、
自然に気持も晴れやかになります。


 早目のランチを済ませて、
慶應ワグネルOBの定期演奏会へ行くのが
友人達、義妹との前からの予定でした。
待ち合わせは渋谷ハチ公前、お上りさんそのものです。
十重二十重のハチ公君の前は避けて、
東横の扉の中で4人が合流、
出かけた先はシェ・松尾。
フレンチランチは上々でした。

そして、タクシーで、会場の人見記念講堂へ。
驚いたことには門を入った途端に、長い行列が出来ています。
全席自由席、早い者勝ちということもあっての
出足の早さだったのでしょうけれど、
見たこともない長蛇に「ああ雨でなくて良かった」と
心底思ったことでした。


 一時半の開演40分前で既に前から3列くらいしか
空席がありません。三列目の右端に4人で並びました。
あっという間に開演です。
先ずは校歌の斉唱から、これ無しには始まりません。
続いての第1ステージ
「わがふるき日のうた」
三好達治の詩を、多田武彦さんが作曲したもの、
しみじみとした、あたたかい情感が心に浸みました。
ことに、Ⅴ 郷愁とⅦ 雪はふるが印象的でした。
言葉のつらなりの美しさ、メロティのゆたかさに
ワグネルの皆さんの情緒あふれる、ふくらみのある歌声が
ぴたりと寄り添っていると感じました。
第2ステージ
女声合唱は夢のイメージの衣装は美しく
歌声は、晴れやかでやさしく、心地好く拝聴しました。
第3ステージ
リヒャルト・シュトラウス歌曲集」より。
最前列の方達は暗譜なさっていらっしゃいましたね。
歌い込んでいらっしゃるなあと思いました。
出だしから声にとても張りがあって、良く通り、伸びやかでした。
言葉は分からなくとも、心を惹きつける力強さがありました。
Ⅴ Cacilie 素晴らしいの一言に尽きます。
歌声は熱く、厚く、響き渡って
心の中があたたかいものでいっぱいになりました。
あのように高らかに歌い上げられるみなさんは、
さぞやお気持が高揚していらっしゃるのだろうなあと、
羨ましいような思いが心を過ぎりました。


 インターミッションの後は
「ありがとう、ダークダックスーワグネルとの絆―」
すばらしい企画でしたね。
時折声を詰まらせていらしたゾウさんの
思いが素直に心に伝わりました。
青春時代いつも傍らにあった懐かしい歌の数々、
活躍していらした頃のダークの皆さんの輝き、
年月の流れが醸し出す郷愁と寂寥とぬくもりとが、
心の中を、なつかし色に染めました。
雪山賛歌、北上夜曲、銀色の道、…どれもどれもひたすら懐かしく、
最後に「銀色の道」に声を合せながら、
ゾウさんの深く温かいお声だけを聴いていた気がします。
素敵に年を取られましたね。背筋の伸びたカッコ良い指揮姿が
今も心に残っています。


 夕暮時の街に出て、雑踏の中を歩きながらも
「近い、近い 夜明けは近い 銀色の はるかな道」と、
心の中で歌い続けておりました。