暑さの残る台北で、18世紀景徳鎮の磁器を観る

 台北と北京の故宮博物館で同時開催(10月7日〜2010年1月10日)されている「雍正大展」を観る為に台北に出かけ、昨日戻りました。お目当ては、雍正帝(在位1722〜35年)の時代に景徳鎮で焼かれた陶磁器です。 
 作品は多岐に渡り、細かい彫り込みの装飾を施した蓋物や気の遠くなるような細かい描写で華麗な絵を施した花瓶など、技巧の限りを尽くしたものが多種ありました。陶磁器に限らず書、画、瑠璃、瑪瑙などの工芸品もあまたあり、彼の芸術に対する熱意とそれを支えた富と権力とを示して余りある展覧会でもありました。
 多くの展示物の中で、私が虜となりましたのは、現在私達が「辰砂」と呼ぶ釉薬を使った壺や花器の見事さでした。流れ易い釉薬が、一気に融けて流れた跡を見せる赤紫が複雑な窯変を見せて、艶かしいまでのしなやかさと深みとそして力強さとを合わせ持っておりました。その迫力は、青磁や染付けの優美さ、繊細さとの対比で更に深まっていたように思います。写真は勿論撮れませんし、実物に近い色の出ている印刷物もありませんから、お見せすることが出来ず残念ですが、18世紀 清の陶工達の技と心意気とそして息吹とを伝えってもらったという思いがしています。