ニューイングランドの風

 新宿の小田急デパートで一週間にわたって行われている
「高鶴元」先生の個展は
ニューイングランドの風」シリーズの6回目。
高鶴先生はもともと九州上野の窯元のご出身ですが、
1980年にご家族と共に渡米され、永住権も取得されました。
1981年にはボストン郊外トップスフィールドに築窯され、
そこで精力的に制作活動を続けていらっしゃいます。


 会場には、彼の地のメープルの紅葉を思わせる
透明感のある赤、オレンジ、黄色の器や置物、陶板、
茶道具などが一堂に並び、
部屋はあたかもニューイングランド錦繍の林の趣きです。
その明るさ、華やかさに、思わず心が弾みます。


 全てを見せていただいた後にまた戻ったのは、
マグカップのコーナー。
すっかり魅せられてしまった品があったのです。
先生のお作の中では始めて見るピンクに薄い赤が変化を
与えている一品です。
この色の変化は、赤釉薬の作品の近くにピンクのカップ
を置いて焼いたことによる窯変とのことです。
つまみの部分と口縁、そして胴には上品な金が施されて、
アクセントになっています。
底の部分に施された渋いブルーの釉薬が高台のようにも見え、全体を引き締めています。
色のバランスの妙と言い、姿の美しさと言い、
私を惹きつけて止みません。
結局その品をいただき、大いに満足して帰宅したことでした。


 明日からは、このたっぷりとしたカップになみなみと
紅茶を注ぐことから一日を始めることにいたしましょう。