寒さが募り始めた日に 東洋磁器と茶陶器を観る

 厚手のコートやジャケットが手放せない時期になりました。あまり気忙しくなる前に、楽しい時間をたっぷり持っておきたいと今日は欲張って二つのやきもの展を観て歩きました。

 一つは渋谷、松涛の戸栗美術館での「鍋島と景徳鎮展」。佐賀藩が将軍家や朝廷に献上する為に焼かせた鍋島焼きと中国明時代の官窯で焼かれた、選りすぐりの精巧で華麗な磁器の数々を心ゆくまで堪能しました。君主の磁器ということですから、当時の最高の陶工が費用や時間を惜しまず技術を磨く贅沢が許されていたのでしょうけれど、職人芸というよりは芸術家としてのセンスと技量を持ち合わせた大集団があったことに驚きを覚えます。特に鍋島焼きの作品の中にデザイン性の卓越した美しい皿を沢山見て感激しました。モダンで斬新なデザインが実に新鮮で魅力的なのです。例えば雪輪文がさりげなく並んでいるようでありながら、全体として美しいバランスを見せている「青磁染付 雪輪文皿」など。論より証拠、ご覧になってみてください。今月の23日までやっています。
 二つ目は根津美術館での「根津青山(せいざん)の茶の湯展」。大正時代の実業家であった根津嘉一郎が収集し、実際の茶会などで使用した茶道具が一堂に会していました。人柄を映してか豪放、大胆、野趣に富んだやきものが多かったように思います。やきものは志野、織部、古瀬戸、古信楽、伊賀、備前、薩摩、唐津、朝鮮のもの等など多岐に渡った品揃えでしたが、この方はことに伊賀と古瀬戸がお好きだったのではという気がしました。会場を一巡すれば、好みの道具を整えて、ゆったりと茶の湯に親しむ青山の姿が髣髴として、その茶室に身を置いている心地する贅沢な茶の湯展ではありました。