梅雨のはしりの小糠雨

 時節柄すっきりしない日が多いのは致し方ないこと。
傘を手放せない日が続いている。 
お天気はさて置いて、母校の公開講座や勉強会に出席して、
耳新しい、或いは懐かしい講義に身を浸すのはとても楽しく
贅沢な時間。
若い仲間から大いに刺激も頂いている。
 最近始まった金谷展雄先生の講座「イギリスの不思議と謎」が
新鮮で面白い。
 イギリスは息子がしばらくお世話になった国だし、
夫と娘の3人連れでロンドンからエディンバラまで10日間をかけて
ドライヴした思い出の場所でもある。
 この講義はもう4回目を数えるけれど、どの授業も充実している。
一回目の「茶樹のなかった紅茶の国」は、ことに日本の茶との
関りの深さもあって、興味津々。
夢中になって耳を傾けるうち2時間弱の講義は瞬く間に過ぎて行った。
 「17世紀半ばに、既に日本との交易が行われていた
オランダを通してお茶がイギリスへと齎され、
上流婦人の間に浸透して行った。
それまで良い飲み物に恵まれなかったイギリス人、
特に女性達(男性にはビールやワインがあった)に
広く支持されたことがイギリスに紅茶が定着した大きな要因である。
やがてお茶を介しての社交も盛んになっていき、
高価なために当初は上流階級の女性に限られていた喫茶が
コーヒーハウスでお茶の入手が可能になると、
庶民の間にも広まっていった。
ウエッジ・ウッドなどでのティーセットの制作が始まったのは
18世紀。
19世紀の中頃にようやくスコーンやサンドウイッチを添えた、
今のafternoon teaの形が整えられた」とのこと。
紅茶の国として長い伝統があり、afternoon tea も日本の
茶道のような歴史に支えられているのかと思いきや
あまりに近い時代から始まった文化と知って意外な思い。

 お茶がイギリスで飲まれるようになった初めの頃、
当時の貴婦人達は茶碗のお茶をソーサー(今より深め)にあけて、
音を立てて飲んだそうだ。
これは日本の文化、特に日本の茶道に憧れを持っていた当時の
イギリス人が、茶人の抹茶の飲み方(最後の一滴を飲み干すとき
「スッ」と軽く音をたてる)を真似たのだろうとのこと。
ずるずると音を立てて茶をすするのは茶道ではマナー違反だけれど、
茶道を垣間見たイギリス人にはその微かな音が
必要なマナーの一つに聴こえたのだろう。
素晴らしいと思い込めば、判断力も薄れてしまうのは洋の東西を
問わずということなのだろうとちょっと微笑ましい。