儚い雪

 6時に起きてきた息子が「雪が降っていますね」と言います。
雨戸をあけるとまだ灰色の空から、
大粒の牡丹雪が間断なく舞い落ちていました

空が明るくなった7時過ぎ、外を見ると雪は忘れたようにやんでいて、
淡い青空が覗いています。
2週間前の大雪とはずいぶん様子が違います。
新聞回収日ですけれど、どうしたものかと迷いながら玄関に出れば、
階段にも道にも雪のかけらもなくて、大きな袋を両手に持って
歩くことが出来ました。
前回は凍った雪に埋もれた花達のレスキューも一仕事でしたけれど、
今回は、うっすらと雪をかぶったパンジーたちも何だかとても元気です。

外の仕事が一段落して家に入りました。
干し柿熱いお茶で一服、
バッハのオルガン曲フーガと前奏曲ホ短調を聴きながら。
先週サントリーホールで聴いたこの曲が、
あれからずっと私の中で響き続けています。
母を想えばオルガンに結びつき、
オルガンを思えば、この曲がゆたかな音を響かせるのです。
特に最後の湧き上がるようなあの響きが。
胸がジーンと反応するのです。
少し感傷的になってしまいました。


 気を取り直してお昼の準備。
今日は到来物の菜の花で、
春をいざなうお昼を用意しようと思っていたのです。
昨夜用意した菜の花ご飯の具にはあなごもたっぷり入れました。
今が旬の真鱈の子と大根、人参、菜の花の炊き合わせ、
お澄ましの実は、紅白蒲鉾と菜の花、
水仙の練り切りを食後用に添えて、出来上がり。

お箸を4膳添えて、仏壇に供えました。
朱塗りの器に盛り付けた料理は、母のお眼鏡に適うでしょうか。
木々は雪の名残りも留めず、空は青々と冴えきっています。