春を招く展覧会

 日差しに温もりが増してきた今日、今年初の展覧会、
出光美術館での「麗しのうつわ(日本やきもの名品選)展」を観た。

展示物は4部構成。
Ⅰ 京の美(艶やかなる宴) 
Ⅱ 幽玄の美(ゆれうごく、釉と肌)
Ⅲ うるおいの美(磁器のまばゆさと彩り)
Ⅳ いつくしむ美(掌中の茶碗)
この流れに沿って部屋がしつらえてある。


Ⅰ京の美
 目を奪わんばかりの圧倒的な存在感を示すのは
野々村仁清の艶やかな大壺、その優美な曲線と華やかな彩り。
尾形光琳、乾山、仁阿弥道八と世に知られた錚々たる大物作家
の大作が30数点並んでいる。
大広間の大床に置かれた色鮮やかな壺の姿を思い描いて
豊な気持に浸る。
乾山が書をしたため、光琳が力強い竹の絵付けをした
22センチ四方の角皿に心を掴まれ、しばし立ち尽くす。


Ⅱ幽玄の美
 桃山から、室町、鎌倉、平安、奈良まで遡り、猿投から
始まり美濃、唐津、志野の各窯からの素朴で温もりのある
陶器が並ぶ。
灰釉、志野釉、唐津釉、織部釉、黄瀬戸釉の醸す
やさしく、やわらかい色調の水指、茶碗、小鉢など。
名も残さぬ陶工たちの手を介して作り出されたやきものたち
にはつつましい生活の匂いがする。
私のお気に入りはやはり志野。「志野橋文茶碗」の気取らない
親しみやすさが心を和ませてくれる。


Ⅲは「磁器のまばゆさと彩り」の副題通りに
白磁に鮮やかな彩の絵付けをした
肥前、鍋島、柿右衛門古伊万里、そして古九谷窯からの
やきものが並ぶ。
ゆたかな色彩の華やぎと賑わい、私には馴染みの少ない
ものだけれど、見ていて無条件に楽しい。
このコーナーで最も惹きつけられたのは明治から昭和の始め
まで活躍した板谷波山の作品。霞が掛かったような淡い色調の
釉薬は夢の中の花のようにはかなく美しい。


(Ⅳ)は「掌中の茶碗」と副題のついたやきもの。
楽茶碗を中心に織部、黒織部の茶碗や香合、向付など。
楽や織部のデザインの中に飛び切りの新鮮さを見出して
心が弾む。素朴さと斬新さと懐かしさが宿る茶碗たち。

展示品141点全てが出光美術館所蔵のものと聞けば、別の驚き
もある。出光は常設展示品(アジア各地から出土した陶片が
数多くある)も含め、常に満足感を持たせてくれる
得難い美術館の1つ。

美術館で心を満たした後は、何時ものコース帝国ホテルの
北京へ。お腹も充分楽しませて、良い一日が暮れて行く。