ボタン雪の朝に

 2月に入ってから、東京では9回目の雪とのこと。
木々が見る間に白い衣に包まれていく。
受験シーズンの2月は雪のシーズンでもあって、
私も雪の中を会場に向かった遠い昔の思い出がある。

 一日勝負の受験生には申し訳ないけれど、
雪降る日に音を聴く楽しみは捨て難く、
友人から戴いたマーラー交響曲9番に耳を傾ける。
9年前の2001年1月3日にライブで聴いた
小澤征爾指揮 サイトウキネン・オーケストラの演奏。
その日の日記の感想には
「緊張感が漲った、実に味わいの濃い演奏だった」とある。
雪の中で一人聴く同じ日収録のマーラーからは、
緊張感よりもむしろ演奏のたおやかさや余裕のようなものが
感じ取れて、私にもゆったり楽しむゆとりがある。
 9年の歳月と聴く環境と・・・いろいろなものが加味されて、
受け取る心はその折々のままに揺れ動く。
響きの美しさは変わらないのだけれど。
雪降る朝のほっくりとした贅沢な時間が過ぎていく。
時計は午前10時を廻ったところ。