桜の菓子器

 本当に思わせぶりな季節です。
10度近い温度の上下が繰り返されて、人間は翻弄されています。
でも草木は重ね着も叶わず、身を晒しながらも季節の到来を
ちゃんと察知して、芽を出したり、蕾を持ったりして、
春の装いを整え始めました。
冬越えしたパンジーやデイジーが一斉に花数を増し、彩りも冴えざえ
と元気です。
ヒヨドリも雀も何時もと変わらぬ活発な動きを見せています。
私も負けじと窯に火を入れ、轆轤回しに精を出しています。

 1週間後には娘が一人息子を連れて、久しぶりの里帰りをします。
心理学のグラジュエイト・インターンとして患者さんを何人か
お預かりしている身としては、勝手は出来ず、
お正月の帰国は叶いませんでした。
でもようやく留守中に交代してくださる方が見つかって、
帰国の目処がついたのだそうです。
 年令を聞かれれば「two and a half」と答える悪戯盛りの孫が
来る前に、割れ物はことごとくどこかに避難させねばなりません。
成形や素焼の終ったものをせっせと窯に入れて仕上げてしまおうと
大車輪の私です。
まだ零下の日が続くボストンから来る彼らにとって、
東京は夢のような暖かさのはず。
彼等のいるうちにきっと桜も開くでしょう。
強張った身体を日本の美しい風景と温もりの中で、
ゆっくりとときほぐして、「やっぱり日本は素敵だわ」の思いを
更に深くしてほしいものです。
昨日焼きあがった桜型の菓子器
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これに桜餅でも盛って、供することに致しましょう。