梅雨の晴れ間に

 オルセー美術館の絵画が日本に来ています。
どうしても見たい絵があって友人と出かけたのは新国立美術館
ポスト印象派展。梅雨の晴れ間の蒸し暑い日でした。
 入場した途端、人の多さに圧倒されました。
入口から人垣が幾重にもなっていて、
肝心の絵までなかなか辿り着けないのです。
それでもお目当てのシスレーの「モレの橋」は
待って待って前まで行き、しばらく眺めることができました。
夫と両親、私の4人で訪れたオルセー美術館以来、10数年ぶりの
再会でした。画の静かな佇まいに、懐かしい日々が重なりました。

 その後、
同じ美術館の1Fで「ルーシー・リー」のやきもの展を観ました。
 こちらは、見たいものがちゃんと傍に行って、
ゆっくり観ることができる状況でしたから、
ルーシーが作り出す繊細で撓やかなやきものの世界を、
そこから滲み出る雰囲気もろとも楽しむことが出来ました。
抹茶茶碗、湯呑、花入などを思わせる形を取り入れながら、
それは実用性を離れ、
抽象画を思わせる幻想的な姿を見せていました。 
 映像で見た、80歳前後と思われる彼女の陶作作業の映像は
印象的でした。
少し身体に不自由さが見えるのに、壺に線を刻む手の動きは
正確で迷いが無く、少しもぶれない力強さでした。
そして扱いにくい磁土の力強い轆轤引き、
どこまでも薄く伸ばし広がりを見せる箆の動き、
自信と経験と技術とに裏打ちされてはじめて生まれた
あの繊細でしなやかな作品達なのだと納得できました。
たおやかな曲線、雅な色彩、繊細な造形から成る
美しい作品達を貫いている心は、
芯のぶれない強さと自身への厳しさと土への愛情に
他ならないと感じさせる作品展でした。