紅の並木道

 秋晴れの日曜日。母とお墓へ参りました。
今の季節は高尾への道すがら山の彩が楽しめます。
四季を通じて楽しみなのは、多摩御陵を囲むように連なる
ケヤキ並木のトンネルです。
夏は空を覆う葉の間から明るい日差しがキラキラと
洩れて、道に縞模様を描きます。
いつも掃除が行き届いているのもさすがです。
 そして秋、並木は色鮮やかなトンネルに変わります。
けやきの紅葉は楓のように真っ赤にはなりませんけれど、
色が様々、木に個性があります。
一本の木が見る角度によっても色違いですから、
行きと帰りの景色が違うのです。
車を止めるわけにはいかない道ですから、
速度を落として時々空を仰ぎながらの紅葉見物です。
 そして晩秋の今日、並木は半分裸木となり、
残った木々からは、黄金色の雨が降り注いでおりました。

 霊園の少し手前に、いつも寄る花屋さんがあります。
花の種類が多いこと、朝7時から開いていること
切花ばかりでなく、花の苗も沢山あることが
お気に入りの理由です。
今日も、色鮮やかな薔薇、カーネーション、白菊、
カスミソウを一抱えと、
深い藍色の深山竜胆を、これは庭用にと買いました。

 園内は、日曜というのに人影少なく、空気は本当に爽やかでした。
限りない空の碧、真っ白な雲、点在する紅、天国を近く感じます。

お掃除をして、持参のお茶と花と線香を供え、
彼岸の人とゆったりと語らいました。
母と私は無口になって、でも心は安らいでいます。
お参り後のしっとりと和らいだ心の奥に、
11月のやさしい陽ざしが届きました。