雪深々と降る午後に

 ここに来て雪がよく降ります。
建国記念日の今日も朝から白いものが舞い始め、
時間を追って本降りとなりました。
昨日から「雪だ、雪だ」と警報も出されていましたから、
出かけることに躊躇う思いもありました。
刻々出る各線の運行状況をチェックしながら
同行する友人Iさんと打ち合わせ。
迷った末に、結局出かけることに決めました。
楽しみにしていたコンサートにです。
電車の窓越しの景色は、斜めに降りしきる雪に
霞んで見えました。

 
 トリフォニーでのそれは、フランス・ブリュッヘン指揮
新日フィルのベートーヴェン・プロジェクトの2回目です。
今日のプログラムは交響曲第4番と第5番でした。
 ブリュッヘンは1934年生まれの76歳。
椅子にかけての指揮でしたが、
私は前から7列目の右端にいましたから、
斜めに彼の手の動きがよく見えました。
淡々とした横顔を見せながら、
長い指の大きな手が、実にしなやかに表情ゆたかに動いて、
ブリュッヘンの音楽を紡ぎ出していました。
4番のゆったりとしたやわらかな音の流れ、
5番の快活で生気に溢れた美しい調べ、
共に深く、心地良く、心に響きました。
 熱演に「ブラボーブラボー」の声は鳴りやまず、
ブリュッヘンは、不自由な足を庇いながら、
5回も舞台に姿を見せました。
ちょっと照れたような、つつましい挨拶の仕方が印象的でした。


 外に出ると、雪はますます勢いを増しいて滑りそう。
足の丈夫なIさんに腕を回して歩きました。
暮れなずむ街並は白いベールにすっぽりと包まれて、
灯りに細かい雪が舞い踊っておりました。