2月のさくら

 今日は陽射しが出るとの予報でしたけれど、
空は重く、空気にぬくもりは感じられません。
迷った末にファーが首の周りを被うコートを
着込んで出かけました。


 駅までの道程の川沿いに
寒空に咲くさくらの木があります。
花は小さく、花数も少なく、
白い花がちょっと淋しげに、寒そうに咲いています。
冬桜というのではないかと思います。年二回咲くのです。
でも図鑑には冬桜の花期は4月と11月とありますから、
違う種類かもしれません。
寒くはないか、2回も咲いて疲れはしないかと
いつも気になる花が、今日もひっそりと咲いていました。


今日は第9を聴きました。
日本ではなぜか第9は年末の演目の印象があり、
2月の第9も少々時期はずれな感じがしないでもありません。
でもとにかく演奏会は素晴らしかったのです。
新日フィルのベートーヴェン・プロジェクトの最終回です。
指揮は今回もフランス・ブリュッヘン
舞台に現れる姿は少し頼りなげなのに、
いざ手が大きく振り下ろされると
思いがけないほど力強く、躍動的な演奏が始まります。
一瞬、一瞬を全身で味わいました。
ソロも栗友会の合唱も張りのある素晴らしい響きでした。
特にバリトンウイルソン・ジョンソンの声が忘れられません。


 帰りの電車の中は少しぼんやりしていました。
心みちていたのと、少し気温が上がって、
のぼせてもいたようです。
いらなくなったコートを手に外に出れば、
空気は春の宵のようなやさしさになっていました。
帰路の川沿いのさくらは、
夕色につつまれて、少し艶めいて見えました。