春一番が吹いたそうです

 日比谷で降りてお堀端を歩きました。
白い鳥が水面にたむろしています。
多分かもめでしょう。
風が髪の毛を巻き上げます。
花粉が沢山含まれていそうな、
ちょっとガソリンの匂いのする風でした。
薄手のコートが邪魔になります。
歩いている額に汗が滲みました。
予報通り気温が4月末並になったようです。


 行き先は出光美術館
私の目当ては尾形乾山の絵付けのある皿です。
友人は酒井抱一の絵が好きなようです。
展覧会のタイトルは琳派芸術。
光悦、宗達光琳、乾山、抱一と煌びやかな
作家が居並ぶ会場は、予想通りの大盛況です。


 艶やかな中にも落ち着きと品位がある
抱一の紅梅屏風はやはり圧巻です。
鈴木基一の秋草図は、暮色の中に白萩が
浮かび上がって幻想的でした。


 それでもやっぱり私には乾山です。
ひっそりとショーケースの中に静まる
風景や花を銹絵付けした角皿に
いつまでも見入ってしまいました。
10客、20客と書かれていますから、
おもてなしに使われた食器なのですね。
どのような人が、どのような料理で
もてなされたのでしょうか。
その時の部屋の様は?と限なく想像が
ふくらみます。
ゆたかでたおやかな世界でした。


帝国ホテルまで歩くのに、
髪の毛は風に巻き上げられて散々でした。
お昼はなだ万で懐石。
コンサートや展覧会には好みのよく似る
大学時代の友人Iさんと行くことが多いのです。
「始終会うのに、よくあれだけ話があるね」と
夫によく言われたものです。


 帰宅して開いた天気ニュースは、
春一番が吹いたことを報せていました。
お堀端の強い風がそうだったのですね。
最高気温は20度にもなったそうです。
もっとも明日は10度ほど下がって寒いとも。


体も着るものも調整に大童です。