三月の雪降りしきる日に

ボストンへ発つ朝に、夜来の雨が雪に変わりました。
みるみる内に白化粧していく庭を眺めながら、
運行予定の変更をチェックしていると、
娘から電話が入りました。
『「When Nanacham is coming?」と問い続けるNoah
を、夜の10時過ぎまで待たせるのは忍びないので、
Newarkまで出向く』と。


成田に向かうバスの窓からの風景は、斜めに降る
細かい雪に畑も林も覆われて、清らかに静まっておりました。
降り方の勇ましさにも拘わらず、
私のフライトには雪の影響は全くなく、
on time で出発し、予定より30分も早く、12時間の
飛行でNewarkに到着しました。
着いたNYの気温は9℃、快晴。
「異常なほどの暖かさだね、雪がないなんて、僕らは
ついているよ」とボストンのビジネスマンは片目を
つぶって見せました。


 待ち合わせのターミナルCの111番ゲートで
一息ついていると、20分ほどして娘たちがやってきました。
遠くから私を見つけて、「Nanacham」と叫びながら突進してきた
Noahはそのまま私の腕に飛び込んで、いつまでも離れません。
周りの人達の目が一様に微笑んでおりました。


 ボストンまでの飛行は1時間半ほど。
眼下に広がるニューヨークの瞬く光の海を
Noahと眺めたのは始めてのこと。
彼のはしゃぎぶりに付き合いながら、
私も久しぶりに、旅のウキウキ感を味わいました。


10時過ぎに着いたボストン空港の気温は、
華氏30度。零下です。
屋上の駐車場には、山積みされた雪の上を
突き刺すような冷たい強風が吹き渡っていました。
1時間20分ほどのドライブで着いた娘の家は、
室内温度、華氏72度、春のような暖かさ。
強張た筋肉が、一気にほぐれるのを感じました。


ボストンと日本の時差は14時間。
ベットに入ってみても、
昼間を記憶している脳に眠気は訪れず 、
ぬくぬくとした居間で、
読書三昧に過ごす第一夜となりました。