ためらいがちな春に

 大きな悲しみの日々に、
華やぎを控えているのか春は静まったままです。
今年は季節が進みません。
冬のように冷たい日が続いています。
桜も咲くのを躊躇っているのでしょうか。


日々のニュースは状況が次々に変って
先が見えにくい日が続きます。
それでも、この危機を何とか乗り越えようと
昼夜を分かたず懸命に働いていらっしゃる方達、
自分たちに出来ることは何でもすると
手助けを申し出る若者たち、
避難所の中でも元気な子供たち、
希望の灯はかぼそくとも確かにあります。


計画停電などは我慢の内に入りません。
トイレットペーパーが無くっても、
代用品はいくらでもあります。
お米が無ければ、麺類でもおいもでも良いのです。
物があるということはそれだけで
とてつもなく有難いことなのだということを
肝に銘じておこうと思います。
不安や不平ばかりを言っていても、気が滅入るばかりで
何の解決にもなりません。
プライバシーもない避難所で、
毛布にくるまり北国の寒さにじっと耐えていらっしゃる
お年を召した方々の表情は
問わず語りに多くのことを伝えて下さいます。
あの災害から難を逃れた私たちが、どんなに幸運だったか
どんなに恵まれているかを思います。
同じ日本の中で、悲しみのどん底に投げ込まれ、
生きていく希望を奪われてしまった方々が、
何十万人もいらっしゃるのです。
同じ日本人の私たちが、その悲しみを、その苦しみを
共感しなくてどうなりましょう。
日本の技術力、強靭な精神力、勤勉な人間力
日本は必ず蘇りましょう。
希望を明日につないで、
祈りの中で生きていきたいと思います。


春の芽生えを見たくて出た庭に、
土の中から唐突に現れたような花が
いくつか咲いていました。

せめてもの慰めにと写真を撮ってから仏壇に供えました。