姫沙羅の咲く頃

 朝から大粒の雨が落ちています。
雨季を忘れかけていましたけれど、
季節はやっぱり律儀です。
 この季節の花の代表は何と言っても紫陽花。
今年の我が家の庭のアジサイは一種を除けば
咲き遅れて、まだ若緑色のボールのままです。
アジサイは色の種類も多い上に、
自らも咲きながら色変わりして行きますから
多彩です。
 でも目立たなくとも、この時期に似合う花は
アジサイ以外にもいろいろあるのです。
ヒメシャラもその一つ。別名夏椿とも言うようですが、
寒さにも雨にも陽射しにも強い椿と異なり、
逞しさは微塵もなくて、
直径2センチにもみたない透明感のある白い小花は、
一日だけ咲いて地面にその姿を散らしていきます。

この控えめで、儚げなさまが茶人にはことの他好まれていて、
この時期によく床に生けられます。
 その他にもこの時期に合わせて咲く木の花に
ヤマボウシ、シャリンバイ、エゴ、ヒメウツギナンテンなどなど。
いずれも白く清らかな姿形をしていて、
重くなった緑の中で、ひっそりと咲く風情はこの季節ならではのもの。
 雨には雨の、中休みには陽射しの、それぞれの楽しみがあって、
日々はゆたかです。


今日はこれから記念誌の最後の打ち合わせに、出版社の方々が見えます。
表紙の仕上がり、タイトルや文章と文字サイズや書体との相性、
写真の入り方、挿絵の入れ方、・・・何と、なんとエキサイティングなこと。
出来上がりは7月の始めです。