姫沙羅の降る朝

 降り続いた霧雨が上がって、薄日が射しています。
穏やかな日曜日の朝です。


 昨日は一日中校正に明け、校正に暮れました。
人との意思の疎通はそう簡単ではありませんね。
丁寧に伝えたつもり、確かに伝わったとの感触、
それが意外に頼りないものであったことを
出てきたゲラ刷りの原稿の中に見出して
戸惑っています。
思いもかけない配置や、写真の漏れ、
挿絵と内容の不一致などなど。

 全体を通して見れば、間違いなくやさしく、心地よい本に
なる見通しは持てるのです。
けれども私の意図にぴったり沿った形にしてほしくて、
その伝え方に四苦八苦しています。
楽しい作業でありながら、何だか深い所で疲れています。


 深呼吸をしに外へ出ました。
白く小さな姫沙羅の花が雨後の道と木の根の辺りに
無数に散っています。

履く端から道を埋めていく可憐な花柄。
一日花の儚さも一面に敷き詰められてみれば
華麗さに変わります。


植えたてのカラジュームがもう勢いを増していました。

夏はもうすぐそこです。