名残の淡雪

 やはり予報が当たって、夜中に雪が降ったようです。
夜明けの庭と屋根はうっすらと白化粧しておりました。
冬の名残の淡雪は、
そこここに少しずつ小さな足跡を止めていましたけれど、

陽射しと共に、ひっそりと消えて行きました。


 気温は上がりませんけれど、時間があるので
久しぶりに釉付けと本焼きをしようと決めました。
ずっと寒さが続きましたから、
それを口実に素焼きのまま放置状態の菓子器が何個かあるのです。

 やる気満々で裏庭に出て、
そこを吹き抜けるとてつもなく冷たい風に晒されながら、
釉薬の入ったバケツの蓋を開けました。
容器の表面に薄い氷が張っているのを見た途端に、
一気に戦意は喪失です。
釉薬に手を入れて、ゆっくりとかき回していると手の感覚が失せました。
これをしないと釉薬が万遍なく混ざらないのです。
早く済ませたい気持に逆らいながら菓子鉢二つに釉薬を掛け、

悴んだ手で窯に入れました。
体は真底冷えましたけれど、済んでみれば満足感が残りました。
さて結果は如何に?、
がっかりしない心の準備をして、明朝の窯開けを待ちます。