台風の予兆が見え隠れして

 朝5時半、
外が白み始めても芦ノ湖の水面はまだ深い蒼に静まったまま。
山々も黒々と無表情です。
空が明るんだ6時10分、富士が朝焼けに染まり始めました。
淡い碧色の空、淡いピンク色の富士、そのコントラストの

何と初々しく美しいこと、日本画の一幅を見るようです。
 

 早目に朝食を済ませ、8時半にはチェックアウト。
玄関前で、もう紅が進み始めている楓を一枚写して出発です。

台風予報が出ているものの、箱根の空はきれいな青です。
幌をすっかり下したオープンカーで緑の山道を疾走する心地良さ。
バイクの若者たちの気持がちょっぴり分かる気もします。


 山道ドライブ1時間半の後、最終目的地仙石原へ。
NHKで「仙石原のススキ最盛期」と報じられていましたから
ススキの原は人・人・人。
息子は車を駐車場に入れるのは諦めて、
私が野原の道沿を歩きながら見物と写真撮影をしている間、
周辺をドライヴしながら時間をつぶしてくれました。
穂の出揃ったすすきが一面に広がる光景はさすがに見事でした。
そしてその根元にひっそりと咲く野の花たちの可憐なこと。
野あざみ、深山竜胆、女郎花、吾亦紅、のこん菊・・・

自然の中で育つ花々は、
色は爽やか、形は小ぶり、でもどこかに凛とした気品があります。


 乙女峠では真正面の富士は頭をすっぽりと雲の中に埋めていれ、
その雄姿は撮れずじまい。
おみやげだけ調達して帰路に着いた11時には
雲行きがそろそろ怪しげになって来て、
下り始めた車のフロントガラスに時々雨粒がぶつかりました。
母の所に立ち寄って、乙女峠からのおみやげ黄金桃を
届けました。
 3時過ぎには空が暗くなり本格的な雨になりましたから、
早目の帰宅は大正解でした。
 今は5時20分、外は早々と闇が押し寄せていて、
強い雨に風も加わり始めました。
やっぱり台風はやってくるようです。
でもゆっくりする暇もなく戻って行った息子は、
もうとっくにアパートに着いて、寛いでいることでしょう。