季節たゆとうて

 昨日は雲多く、肌寒い一日でしたのに
今朝仰いだ空は、秋晴れの一日を予告するように
眩しい光を放っておりました。

陽が高くなるに連れて気温も急上昇、
長袖から半袖に替えました。9月の陽気ということです。
コスモスが咲きそろい、
開け放った窓から金木犀の香りが漂います。
風の涼やかさは紛れもなく秋のものですが。
午後、お人が見えたので、少し念入りに掃除をした部屋は、
さっぱりとして良い気分です。
「いつもこうしておけば良いのに」またしても思うことです。


 舅の17回忌に宇部に行って、本当に久しぶりにお会いした方が
何人かありました。
その内のお一人、画家の岡本 錦さんは夫の遠縁にあたる方、
お会いするのは、
2009年12月に銀座の画廊で水彩画展を開かれた時以来です。
スピーチをしている人の顔のデッサンを続ける錦さんの
手許に見惚れました。

今年の9月に宇部の菊川画廊で個展をなさったとのこと
その時の出品作品36点を
9ページの写真にまとめた貴重なお品を頂きました。
今日は思いがけなく来客の予定が早く済んで、
時間がたっぷり出来ましたので、
待ってましたとばかりにいただいた絵の写真を広げて、
じっくり拝見しているところです。


 錦さんの絵の特筆すべきは、迷いのない鉛筆の
力強く、潔い走りだと思います。
私が殊に惹かれたのは、この若い女性のデッサン。

くっきりした数本の線がふくよかな顔の輪郭、瞳の煌めき、
豊かな髪、多くのことを語りかけてきます。
花の絵が大好きです。
あじさい」の青、葉の緑、瑞々しさが溢れでて、

命のゆたかさを感じます。花の煌きも伝わります。
露草、百合、菜の花、薔薇、ほうずき、ジンジャー
どれも生き生きと己の春を歌っているかのようです。
そして柿と栗、実りの季節のぬくもりと太陽の恵が
熟した柿から匂い立っているようでした。

港の市場、
海と手前の陸のモザイク模様にも見える白とブルーの濃淡の爽やかさ、

ピサロの描く冬の空を思いました。
36枚の絵は、見返すたびに趣を変えて、
観る者を飽きさせない生気があります。
今日の午後はその中に埋もれて、豊かな時間を過ごしました。


また東京での個展をお考えと伺っています。
次は写真ではなく直に絵と向き合って、
じっくりと会話を交わしたいと、
その時を心待ちしています。