猛吹雪 in Boston

 ボストンに着いて4日目の明け方2時です。
まだ時差が修正出来ず、こんな時間に目覚めています。
この地を直撃したブリザードは、
日本でも大きく報じられているようですが、
ここに住む人々は、いたって冷静に、
いつも通りの冬の日々を過ごしているように見えます。
大混乱が起こっているという報道もありません。
外出禁止令が2日間続きましたけれど、雪が小止みになると、
雪の下から車を掘り出す人たちから、
楽しげな笑い声も聞こえました。


 ボストンへ発つ日の8日朝6時半、家を出ようと玄関に降り立った時、
電話のベルが鳴りました。
ボストンに住む娘からでした。
「ストームが来ていて、学校も職場も明日はお休みなの。飛行機は飛ぶの?」と。
とにかく成田まで行ってみようと、次男に駅まで送ってもらい、
7時20分の成田行きリムジンバスに乗り込みました。
受け取った荷物を出国カウンターに預けたのは10時、
ボストンに関する情報は、「吹雪になる3時間前に、
ボストン行008便はローガン空港に到着する予定」というもの、
フライトは定刻に発つということです。


 出発便に乗り込んでから、出発まで30分ほど待たされたのは、
直前になって旅行を取りやめる人が続出したからのようです。
飛行はまことに穏やか、
機長からの天候に関する報告も「おおむね良好です」というものでした。
変化が出てきたのは、ボストン到着の1時間ほど前からです。
小さな可愛い雲がむくむくと湧き上がって、空を覆い始め、
あっという間に見渡す限りを覆い尽くしました。

この時の高度は37000フィート(約11300)。
このとてつもなく大きな雲の群(高さ10000m前後の由)が、
実はボストン方面に向かうブリザードの正体だったと
知ったのは後のことです。
スノー・ストームの雲の上を飛び越して、
私たちは一足先にボストンに着いたことになります。
到着時間の30分前から高度を下げ始めた機体は濃霧に包まれて、
辺りは真っ白になり、何も見えなくなりました。
そして次に視界が開けた時は、
ボストン空港の滑走路が目の前だったのです。
窓の外には小雪がちらちらと舞っておりました。

 
 入国審査を済ませて荷物を受け取り外に出ると、
待っていてくれた娘の表情が、いつになく緊張しています。
「ああ無事に着いて良かった」と言葉にも切羽詰ったものがあるのです。
示されて見た到着便のボードから始めて状況が分かりました。
私の乗ったフライトJAL008便以外のすべてのフライトに
「Cancelled」と赤い文字が記されていたのです。

ボストンには35年ぶりといわれる猛吹雪の警報が出ていて、
学校も職場も休み、2時以降のドライブには罰金が課せられるとのこと、
帰りに寄ったスーパーマーケットは、
食料を買い溜めする人々で溢れていました。
30分ほどの買い物を済ませて外に出ると、
辺りの様子が一変していました。
向こう側が見えないほどの大降りになった雪は、街を鉛色に変えて
フロントガラスを激しく叩きます。

迫りくるものの容易ならざることにようやく気づいて、
体に緊張が走りました。