母を偲ぶお茶の会

 母が旅立ってから半年が過ぎました。
その間に、「先生にご挨拶をさせていただきたい」、
「お茶室に伺わせていただきたい」とのお声が
母のお弟子さんたちから次々に寄せられていたのです。


 母の好んだ茶道具でささやかな茶会をして、
母を偲んでいただこうと、義妹と話し合って、
今日は社中の方々をお招きしてありました。
朝まで残っていた雨は出かける前にはもうすっかり上がって、
母の面目躍如です。
と言いますのは、母の名前は照代、茶名は宗照、戒名は紫泉宗照大姉、
いつも陽射しに恵まれた人だったのです。 
 

 9時前に母の茶室に着きましたら、既に義妹が
お客様をお迎えするための茶室の準備を整えくれていました。

今日の床の軸は「山水清音有り」
花は、義妹が庭で丹精している茶花を7種を摘んできてくれました。
母がサラサラとさりげなく生けていた茶花が
義妹と二人がかりでもモタモタ、
修行の意味を思い知りました。

義妹が風炉に火を入れ、釡に湯を沸かします。

持参したお菓子を器に盛り

お茶を入れてと、
いつもと同じ準備をするのにも
思いがけなく時間が掛かって、
社中の皆さんが次々見え始めても完了していない始末です。
母がさりげなくこなしていたことが、
どれほどのことだったかを改めて思い知りました。


 私たちが支度をする間、お弟子さんたちは
お一人ずつ母と長い会話を交わしていらっしゃいました。
泣き崩れる方の背を見ながら、私も涙が止まりません。

  
 母の許へ最後まで通ってこられたお弟子さん7名全員、
そして、義妹と私、9名が集いました。
「みなさんよくいらして下さったわね。お会いできて
こんなにうれしいことはないわ。」母の声が聴こえます。


 みなさんが茶室に移られ、 
母の許へ52年間通ってこられたお弟子さんの発案で
先ずは母への供茶のお点前をしていただきました。

お点前の途中ですすり泣く方も何人かいらして、
座がしんみりしてしまいましたけれど、
床の間の母の写真はにこやかでした。
母のいないことを再確認する集いではありましたけれど、
思い出を語り合いながらも笑い声が出て、
あの頃と変わらぬ和やかな会は4時間近く続きました。


 「ここにはいまでも先生がいらっしゃる気がして、
心がとても静かになる」
「先生が教えて下さったことは心にしみついていて、
いつも自分の道標になっている」
皆さんからうれしい言葉を頂きました。
母が遺してくれた置きみやげの大きさを思います。


 今後のお茶の稽古について、皆さんとお話しました。
そして社中の皆さんと私、義妹の気持が、
「先生が、母が遺してくれたお茶をこれからも続けていきたい」
の想いで、一つなのを再確認しました。


 母の新盆を済ませた後に、
「また茶室でお会いしましょう」と約して、
いつも母と3人でしていたように、
みなさんを玄関でお見送りしたのでした。