紫陽花の色さえて

 朝カーテンを開けた時は、空は厚い雲に覆われていました。
でも午後になると、雲が打ち破られて
今は、碧いきれいな空が広がっています。
梅雨の天気はとても気まぐれ、でも空気がやっぱり湿り気味なのは、
紫陽花の彩を見ればわかります。


 昨日は二年ぶりに東西4大(慶應同志社、早稲田、関西学院
OB男声合唱団の演奏を聴きました。

コンサート会場は、池袋の東京芸術劇場


 一時半からの開演に間に合うようにと
新宿で11時に友人Iさん、義妹Hさんと待ち合わせ、
フレンチ懐石のランチをとって会場に向かいました。 
 会場に着いたのは開演時間10分前、大盛況です。
幸運なことに、ワグネルで歌われるFさんの奥様と隣り合わせになりました。
ロシア語の歌曲を暗譜で歌われるFさんのお家での練習ぶりなどうかがえて、
メンバーのみなさんのご努力も想像できました。


 演奏会の幕開けは、エールの交歓から。
心のうきうき感が高まります。


 プログラムは、同志社(クローバークラブ)「おらしょ」から始まりました。
聖歌と民謡がコンバインしたような不思議な旋律は哀愁を湛え
切なさが胸に迫ります。よく響くぬくもりのある演奏でした。


 慶応ワグネルによるチャイコフスキーの歌曲が続きます。
ロシア語なのに譜面を開いている方はほとんどいらっしゃらない、
みなさんのご精進に脱帽です。
「それにしてもロシア語」と、
心のどこかに近づきがたい思いがあったのでしょうか、
一曲目「何故?」、二曲目の「さわがしい舞踏会で」までは
歌声との間に薄いベールが張られているようなもどかしさ、
でも3曲目[語るな、わが友よ]に心がスーッと吸い寄せられる
感覚を覚えました。
土の香りがするような素朴で実直な語感のロシア語と、
溢れる想いを訥々と語りかけるようなこの曲のイメージとが、
本当にしっくりととけあっていると感じられたのです。
そう思った途端に、皆さんの歌声が直に心に伝わってきました。
潤いと深みのあるふくよかな歌声でした。

「憧れを知る者のみが」では感情の起伏、多彩な表情が、
いきいきと伝わって、少し興奮しながら耳を傾けました。

ドン・ファンのセレナーデ」はかろやか、のびやか
最後の歌い上げは、高らかによく響いて、印象的でした。

「ロシア語ならではの語感なくして、
チャイコフスキーの歌曲は成り立たない」
の意味がほんのちょっぴりですけれど、分かったかもしれません。


 関学新月会の「Old American Songs」は楽しませて頂きました。
軽やかで歯切れよくグループの特徴を生かした選曲との印象を受けました。

 
 早稲田稲門グリーンは先ずはそのメンバーの多さに圧倒されました。
水のいのち」大好きな合唱曲です。
小林研一郎さんの指揮は本当に表情豊か、
歌い手はそれに緩急自在に応じて
彩り豊かな音色を紡ぎ出します。素晴らしい演奏でした。


 最後は4校合同演奏。
舞台の上には400名ほどの方がいらしたのでしょうか?
その方達の大合唱は、
「斎太郎節」(宮城民謡)からソーラン節(北海道)、
五木の子守唄(熊本)、最上川(山形)と続きました。
その力強さ、伸びの良さ、素晴らしいハーモニー、
心にビンビン響きました。
そしてアンコール曲は、
畑中先生を偲んでの月光とピエロから「秋のピエロ」、
涙が溢れて止まらなくなりました。
かって夫とそのお仲間がご縁のあった福永陽一郎先生、
先生から直接ご指導いただいた宝もののように大切な歌なのです。


 心にいただいた沢山の贈りものをこぼさないように、
そーっと胸にしまい込んで、
幸せな想いのままに家路に着きました。