紅薔薇の咲く日に

 空はもったりとしていましたけれど、
風は涼しく、心地よい朝でした。
起き抜けに玄関を開けると
目に飛び込んできた真っ赤なバラ一輪、

遠目にも鮮やかです。
繁茂した木々、
背丈の伸びた捩り花、

勢いの良い花壇のハーブたち
水をたっぷり吸って植物たちが元気です。


 今日は父の命日です。
あの日が蘇ります。もう10年の月日が経ちました。
9時過ぎ、弟、甥と一緒にお墓参りに出かけました。
日曜とて、車が多く出ていましたけれど、
さほどの渋滞も無く、高尾に着きました。
父と母の墓前には薔薇とカーネーションとヒマワリを活けました。

そして夫には薔薇2種とカーネーションを。

終の棲家がご近所の両親と夫を思えば、
彼岸での賑わいも想像できて、心に安らぎが宿ります。
帰る道々、ありし日のあのことこのことを、
笑いながら語らいました。
父も母も夫も良い人生を全うしたと信じられることを有難く思います。
そして、三人に守られ、支えられて、安穏に過ごす私達です。


 父のために用意した昼食は、
好物のクリームシチューと焼きたてのパン、ポテトサラダ、
デザートはあんみつでした。

我が家を訪ねてくれた時「何が召し上がりたい?」と訊ねると
「あんたのクリームシチューはおいしいから、それをお願い
しようかな」と父はいつも言ってくれました。
さりげなく添えるそんな励ましの一言、一言が、
私の人生の応援歌だったのですね。