葉月入り

 このところずっと続いていた重苦しい空が
今日の午後になって青空に替りました。
待ちかまえていたような蝉しぐれ
蜥蜴が姿を現し、黄金虫がごそごそ、紋白蝶もスズメバチも。
みんな夏の陽射しを心待ちしていたのですね。


 カメラ片手に庭に出てみました。
蝉の声が一瞬止まります。
木の根方に近づいた途端に数匹の蝉がジジッと逃げました。
でも楓の幹で慌てず騒がず寛いでいる油蝉を一匹見つけました。
近づいてカメラを向けても静かにしています。


 楓の隣のみずきの幹にはセミの抜け殻がいくつも張り付いていて、
それを目で追って行くと、
上枝の数枚の葉がもう紅葉していたのです。

勢いでその様を読んで、書にしたためました。

「空蝉の数を辿りて見上ぐれば水木の上枝(ほつえ)に秋進みゆく」


 ようやく夏の陽射しがやって来たばかりなのに
もう忍び寄る秋がそこここに見え隠れしているのです。
菊の蕾もずいぶんと膨らんできました。
こうした季節の駆け引き、鬩ぎ合いが、
日本の四季の妙をいっそう引き立てているのですね。
「日本に生まれて良かった」の思いが、
心を過ぎるひとときです。