季節が少し落ち着いて

 竜巻と云えば土地が広々と開けた、気温の高い、
アメリカ南部やテキサスなどに起こりやすい気象現象と
ばかり思いこんでおりました。
ところが今年の夏はどうしたことでしょう、
日本のあちらこちらでこの現象が起こって、被害が続出、
猛暑や豪雨が続いた後だけに、不安が心をよぎりました。
でも今朝は
「今日は全国的に穏やかな一日になるでしょう」と
気象予報士さんも明るい声。
なるほど、風もなく空気も爽やかでした。


 3月から貸し出していた松田正平さんの薔薇の絵が、
今日半年ぶりに帰宅しました。
山口県立美術館で2か月、他の100点の作品と共に公開された後、
鎌倉にある神奈川県立近代美術館に移動して更に3ヵ月、
9月1日にその会期を閉じました。


 厳重な梱包が丁寧にほどかれて、絵が顔を出し
半年ぶりに壁に掛けられると、部屋が元の雰囲気を取り戻しました。

「しばらくね」と声をかけましたら、
運んでみえた学芸員の方が「長い間ありがとうございました」と
私にともなく、絵にともなく挨拶をなさいました。
NHK新日曜美術館で放映されてからは
観に来られる方がますます増えて、
うれしい感想もたくさん寄せられたそうです。
松田さんの絵の持つ純粋さ、素朴さ、温かさが大勢の方に
伝わったと伺えば、持ち主冥利に尽きるというものです。
良い企画をして下さった美術館の関係者の方々に心から感謝しています。


 絵の運び出しの時から会期中、そして元に納めて下さるまで
半年にわたるご苦労をよそ目ながら垣間見る機会を得て知りました。
一つの展覧会の成り立ちは、
大勢の方がたのアイディアと意志と努力と行動と協力の結晶
なのだということを。
絵をお貸しして本当に良かった、
からしか見たことのなかった展覧会の
後ろにある世界に触れさせて頂けたのですから。