秋雨の日にドボルザークを聴いて

 窓を開けると鼻をくすぐる芳香に包まれます。
秋の訪れを香りで知らせる金木犀の訪れです。
誘われるように庭に出て高い木を見上げれば、
金色の小花が毬のように固まって咲いていました。

見上げる顔に雨が細かく降りかかります。
今朝はことのほか香りが匂い立つのは、
重い空気に薫りが留まるからなのかもしれません。
秋を手にした実感があって、
ちょっとうれしくなった朝でした。


 友人と新宿で待ち合わせ、池袋の東京芸術劇場へと
向いました。
今日はコバケンワールドVol.5、
ベートーヴェンドボルザークを聴きました。
ベートーヴェンはピアノ協奏曲第5番(皇帝)
ピアノは仲道郁代さん。
前から4列目の席のお蔭で、感情が溢れ出るような豊かな演奏が、
手の動き、顔の表情、体のしぐさの表現と相まって、
紡がれていく様を、たっぷりと見せていただきました。


 2曲目はトボルザークの「新世界より
曲の聴き方、面白さ、楽しさを小林さんが
短い小節のメロディや、楽器の音色などの演奏を
随所に入れながら、楽しく解説をしてくださいましたから、
演奏への期待感はいやがうえにも盛り上がります。
聴衆の心をギュッと掴んて夢中にさせる力強さとワクワク感が
あの瞬間の演奏にはあったと思います。
アンコール曲はブラームスの「ハンガリー舞曲」、
心の底から鼓舞されるような躍動感あふれる演奏に、
万雷の拍手と「Bravo」「Bravo」、素敵でした。

私の心は丸ごと大満足でしたけれど、
三々五々散っていく人たちの弾む会話にも、はじける笑顔にも、
演奏会への満足感が感じられて、
今日の会の大成功が、言わずもがなに語られているようでした。


 外に出ると小雨がまだしとしとと降り続いていて、
湿った空気の中に秋の気配が一層濃く感じられました。。

(10月5日夜記す)