秋晴れの日々に

 細かい雨がフロントガラスを叩く夕暮れ時、
娘を、次男と一緒に成田まで送って、戻りました。
娘が日本へ戻った10月29日も雨でしたけれど、
その後の3日間は、こよなく美しい秋空に恵まれて、
心に残る良い時間を持てたようです。
そして今夕、良い笑顔を残して、
息子の待つボストンへと帰って行きました。


 10月30日、次男に送ってもらって、
9時のリムジンバスに乗り込みました。
娘にとっては祖母の、私には姑の七七日に参列するために。
いつも変わらぬ宇部の家の静かな佇まい、

玄関アプローチ

母の微笑む奥座敷

心から慕っていた祖母が、もう本当にいないと思い知らされて
娘は言葉も無く涙ぐんでおりました。
日の落ちる頃から、明日は彼岸へと旅立つ母と家族との
別れの会が持たれました。
それは明るくて、もてなし上手だった母にふさわしい
ほっとするような温もりと笑顔のある集いになりました。


 そして、一夜明けた31日、
菩提寺のご住職とそのご子息とによる七七日の厳かな法要が営まれ、
母の旅立ちを静かに見送ることが出来ました。
場所を移してのお斎の場では、
母を介しての懐かしい方々にお会い出来て、
これも母の心遣いという気がしきりにしたのです。
母はいつも自分のことよりも人への気配りを大切にした人でしたから。
画家のN. O.さんからは、この度も素敵な画集を見せて頂きました。
新作の松月院の絵の写真も。清々しさと荘厳さが漂う美しい絵でした。
そして頂戴したVeneziaの風景画の写真には、
私の憧れる、潔く、力強いラインで、、
水の都の佇まいが描かれておりました。


 残された最後の一日は、市役所、銀行、デパート、
本屋と慌ただしく廻って、
ようやくゆったりした時間が持てたのは、義妹の家を訪れた時、
心つくしのお茶とお菓子のおもてなし、
尽きないおしゃべりに時間はあっというまに過ぎて行きました。
そして手渡された弟、義妹、甥からのノアへのお土産と
クリスマスプレゼント、
ポケモンのカードは、甥のF君がノアのために選んでくれた
最強のカードとか。

そして娘の誕生日にと暖かいマフラーのプレゼント、
ボストンの寒さを慮ってのことなのです。

溢れるほどの思いやりと温もりが伝わってきます。


 娘の短い旅は、
たとえようもなく大きなやさしさに包まれて過ぎて行きました。
そして娘と過ごした日々に、
私の左手首には、いつもピンクのブレスレットがありました。

ノアが「Nanachama's colors are pink,purple and white」と
言いながら、カギ棒と格闘して編んでくれたというおみやげ、
私の心は今もポッカポカなのです。