照葉、最後の輝き

 師走に入ってからもずっと続いていた上天気が、
今日は一転して寒空になりました。
東北、北海道は雪だそうです。
東京も気温が急に下がって、落ち葉掻きも
むくむくと着こんでやりました。
師走としては当たり前の気温のようですけれど
穏やかさに慣れた身には、冷たさがちょっとこたえました。
ずっとライトアップをしていた道沿いの2本の楓は
もう殆ど葉を落としましたから、
昨日からは庭の中央の木にライトを当てています。

もうあと数日の命でしょう。
寒さが募る頃には楓の照葉はみな地に落ちて、
彩りと云えば、南天、千両、万両の紅が際立つようになります。


 昨年の今日は母の告別式でした。
今年は一日に、親しい方だけを招いての法要をしました。
信州の父の菩提寺からいらして下さる若い坊様のお話がいつも
とても心に残ります。
「12月8日は仏教の世界ではとても重要な日ですが、ご存知ですか?」
と聞かれて、誰も俯くばかり。
「クリスマスはご存知ですね。でも皆さんは仏教徒ですから、
もう少し仏教のことを学んで下さい」と耳に痛いことを云われて、
皆恐縮しています。私も勿論のこと。
12月8日は釈迦が悟りを開いた日なのだそうです。
どんな悟りかと云えば「すべては自分の内にある」という悟り。
その他の宗教は、何かの教示を得るという形、外から得るもの、
これが仏教と他の宗教との違いというお話でした。
力のある、よく通る声で読経を上げて下さる中を

母に語りかけながらお詣りをしましたら、
心の中に安らぎが広がっていくのが感じられました。


 昼食会は高尾うかい竹亭で持ちました。
高尾の山もうかい亭の庭も秋色に彩られて、まことに優雅でした。



母が日頃から親しんだ、ごく内輪の方が集うて下さいましたから
会は終始とても和やかで、笑みの絶えることのない時間が流れました。
名の通り(宗照)、いつもお天気に恵まれた母でしたから、
その日の空模様を全く心配していませんでした。
期待に違わぬ、穏やかで暖かな一日に恵まれたことが、
母の心の和みの証のように思えて、しあわせでした。