春は足取りも軽く

 日毎に木の芽がふくらんで、花々は彩りを広げていきます。
時折強い風の日もあります けれど、
まだ桜を散らしませんから、許せます。
ドライヴは窓を開けて、ピンク色の空を横目でチラチラ、
家に帰れば、5分咲きの海棠が迎えてくれます。

赤い一点を見つけて近づいて見れば、
紅朴伴が8分咲き、

心浮き立つ卯月入りです。


 このところうれしいこと、楽しいことが続きます。
夫の親友のKさんに久しぶりにお会いしたのもその一つ。
お目にかかると思わずハグをしてしまう懐かしさです。
Kさん率いる古典音楽協会の定期演奏会でのこと。
彼の人柄が演奏会の心地よさを作り出して、
上野の東京文化会館小ホールは、いつも、いつも満席です。
バロック音楽は、あまりに美しく穏やかで、
時に子守歌にもなってしまう程ですけれど、
聴く人をうっとりとさせる魔法のような音楽です。
春の宵に相応しい長閑で麗しい響きを堪能して、
ロビーに集う人々の表情も和んでおりました。
期待していた上野の桜は、夜風の冷たさに体をすぼめたのか
まだ見頃には間があるようでしたけれど。


 昨年の6月に手を付け始めて十ヶ月、3月31日発行として
「茶室の十二か月」が出来上がりました。

母の茶室を一年間追いかけて纏めた、母の息づかいです。
お茶をご一緒している方達、友人たち、叔母や従妹へと
行き先を決めてみると、30冊の本は、私の手許に一冊残るだけ、

それでも母を知って頂けることがうれしくて、
せっせと送り続けています。


 15年間使った冷蔵庫が怪しい動きをするようになって、
新しくしました。道具、家財の一つと割り切れないほどに
長く付き合ったものは、別れ際にやっぱり感傷のようなものが
心を過ります。きれいに磨き上げて、送り出しました。
そしてやって来た冷蔵庫は息子の選んだ家具調のもの、
片開きが両開きになって、容量もかなり増えました。
まだ使い勝手にぎこちなさはありますものの、
何と言っても気分が良いです。
良いことの一つに挙げておきましょう。


 *ずーっと心を占めていた母の相続の問題が間もなく完了すること、
*母の化身、薄紫の菫「神知る花」にそこここで会えること

*久しぶりに明日は窯開けができそうなこと、
*雪に痛めつけられた花壇が復活したこと、


宿根草が彩りを広げていること、


*息子とさくらドライヴの約束が出来たこと、

*2週間後にボストンに出かけること
大きな事、小さな事、諸々ですけれど、
それが積み重なって、心を持ち上げてくれています。


 さくらの季節、花々の季節、始まりの季節、出会いの季節、
今を楽しまなければ、もったいない、もったいない。