空晴れ渡る好日に

 今日も朝から上天気、気温は昨日同様20℃になるそうです。
私の気分は天候によって、大いに左右されます。
菜種梅雨も五月雨もまことに風情がありますけれど、
それは夫々が季節に相応しい顔だから。
秋は碧く澄んで、雲一つない、高い高い空、心地よい風、
これが私の思うこの季節の顔なのです。

昨日も今日も秋そのもの、それに応えて、季節の花が盛んです。
垣根に咲く山茶花

匂やかな菊、

赤く熟した千両の実、

陽射しに輝く撫子

どれもどれも愛おしい、
秋日和が一年中で一番好きな所以です。


 昨日は、友人達と慶応ワグネルソサイァティの演奏会に出かけました。
渋谷で落ち合い、
昼食をシェ・松尾で済ませてから、
会場の昭和女子大学人見記念講堂へ向かいました。

開演30分前でしたが、講堂の入り口前は大層な賑わい、
若い方の姿が多いのも心強いこと、演奏会の盛況ぶりが伺えます。
会場の入り口前のホールで、
いつもお世話頂くワグネルメンバーのFさんにお会いしました。
いつもながらお顔の艶良く若々しくていらっしゃる、
心に張りを持っていらっしゃる方は表情も違います。


 プログラムは
・「草野心平の詩から」から始まりました。
詩の解釈、そしてそれを歌で表現する、
この作業はきっとものすごく難しいことなのだと思います。
10代後半から20代始めの学生さんはどうのように
受け止めていらっしゃるのでしょうか?
詩の心を声に乗せるという意味では、
少し情緒不足の感はありますものの、
中盤からは、高音がよく伸びて、美しい響きでした。
一生懸命さの伝わる演奏でした。
・合唱詩「ふたたび」
個人的にはこの演奏が一番好きでした。
ことに「小さなフナに寄せる歌」が。
声が揃い、力強く、よく響き合っていて聴き応えがありました。

男声合唱とピアノのための組曲「天使のいる構図」
谷川俊太郎の詩は心の深い所に触れますね。
「のはらにもうみべにも まちかどにもへやのなかにも
すきなものがあって 
でもしぬほどすきなものは どこにもなくて 
よるをてんしとねむった

やまにだかれたかった そらにとけたかった
すなにすいこまれたかった 
ひとのかたちをすてて 
はだかのいのちのながれにそって」
(希望に満ちた天使)
しみじみと抒情的、聴き惚れました。


 さていよいよOBの方々による歌劇ローエングリーンの開幕です。
幕が上がると舞台には100名ほどの方々がいらして、
でも、どなたも譜面を開いてはいらっしゃらない、
この膨大なドイツ語の歌詞を暗譜なさったのかと、
その心意気にまずは感動です。
エルザや王よりもバックの合唱ばかりに耳が集中します。
圧倒的な声量と歌唱力、
そしてふくよかさとのびやかさ、
今回も練習に練習を重ねられ、
みなさんお心にゆとりを持って歌われたのでしょう。
会場いっぱいに響き渡る歌声には包容力があって、
私の心もその中に包み込まれておりました。
途切れない拍手に、告げられたアンコール曲は、
サンサーンスの「白鳥」
ハミングで歌われた静謐なひとときは、
ローエングリンの熱気から、
心を安らぎの湖畔へといざなってくれたのでした。


 久しぶりにワグネルの合唱を聴いた友人の感想は、
「心に溜まった諸々のストレスが拭い去られたような気分」
というものでした。


 聴き手の心に清涼感とぬくもりをそっと届けて下さる、
これがワグネルの歌い手の皆さんのなせる業です。